芥川龍之介の「人間失格」、改めて読んでみてはいかがでしょうか。
読んだことのある方が多いと思うのですが、改めて読むと、新しい発見がある日本の私小説の最高峰だと思います。
人間の生きる意味、生きることの虚しさを表現しながら、人間の生きることのすばらしさを表現できるのは、この時代の、ある種の特権階級の世捨て人だからこそできる表現なのではないでしょうか。
これほどまでに人間の内面をえぐった小説は皆無だと思います。
人間の見てはいけない、見たくない、それでも見なければならない本性を、これでもかと各種登場人物に重ね晒していきます。
いずれの登場人物も、表と裏の顔をもち、この世の中は、自分だけ、自分がすべてであり、かつ、救いようのない自助のみの世界であり、裏切りや騙しを嘆くのではなく、それが日常、現実であることを訴えかけてきます。
寂しくもあり、哀しくもありますが、この世の真実を小さな光で照らしだした名作といえるのではないでしょうか。
コメント